要確認!赤ちゃん連れが使いやすいトイレの設計5つのポイント
赤ちゃんは一日に何回もおむつ替えが必要です。ママやパパは、赤ちゃん用の設備が充実しているかどうかで行き先を決めることも。
さらには、行った先の設備について口コミで共有するなど、赤ちゃん連れで過ごしやすい環境が整っているかが施設の評価を左右します。
ここでは、赤ちゃん・子ども連れの方がトイレに求める設備と設計時に気を付ける5つのポイントを解説します 。
目次[非表示]
- 1.乳幼児連れ対応の個別機能トイレに必要な設備
- 1.1.・ベビーキープ
- 1.2.・おむつ交換台
- 1.3.・着替え台
- 1.4.・ベビーカーで入れる広さ
- 2.設計時に気を付けるべき5つのポイント
- 2.1.①ベビー設備の設置を分散させる
- 2.2.②カギや非常ボタンなどスイッチの位置に注意する
- 2.3.③保護者が目を離さない位置に設置する
- 2.4.④作業スペースの考慮
- 2.5.⑤必要な設備がわかるようにする
- 3.まとめ
- 3.1. カタログ・データダウンロード
建築設計標準では、ベビーキープやおむつ交換台などのベビー設備は、できるだけ多機能トイレから機能分散し、一般トイレ内に配置するように記されています。特に床面積2,000㎡以上の施設※は乳幼児連れ対応個別機能トイレの設置が義務付けられています。
せっかく訪れてくれた施設に対して「なんだか使いにくいトイレだったな」と思われないように、設備の充実だけでなく使いやすさにも目を向けて設計することが大切です。
※不特定多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する建築物(バリアフリー法第17条に基づく認定建築物も含まれる)
乳幼児連れ対応の個別機能トイレに必要な設備
では、実際に設置が必要とされている設備にはどのようなものがあるのでしょうか。
建築設計標準では赤ちゃん・子ども連れの方が必要としているものとして、ベビーキープ、おむつ交換台、着替え台があげられています。
またベビーカーで入れる広さや間口(65㎝以上推奨)の確保が求められています。
参考:建築設計標準 2.7 便所・洗面所 (4)乳幼児用設備を有する便房
・ベビーキープ
保護者が用を足す際に赤ちゃんを座らせておく椅子です。ベビーキープという単語は国語辞典にも掲載されるほど一般的になってきました。(三省堂国語辞典に掲載!)
ベビーキープがないと、保護者は赤ちゃんを抱っこしたまま衣服の着脱などを行うことになります。
・おむつ交換台
赤ちゃんのおむつを替えるための設備です。赤ちゃんを台に寝かせて使用します。
スペースに合わせて縦開き、横開きを選択します。
おむつ交換台の設計ポイントはこちらで解説しています。
おむつ交換台の違いはこちらの記事で解説しています。
・着替え台
パンツタイプのおむつを替える時に便利な着替え台です。お子さまを立たせたまま作業が出来るので効率よくおむつ替えが出来ます。またおむつ交換台は高さがあるため、その上に立たせてのおむつ替えは落下の危険があります。
建築設計標準でも高さのない着替え台でのおむつ替えを推奨しています。
参考:建築設計標準 2.7 便所・洗面所 (4)乳幼児用設備を有する便房 ③ 部品、設備等 留意点
大人の着替えにも使えます!
コラム おむつの種類【テープタイプ・パンツタイプ】 おむつには、平面になっており赤ちゃんの体を包んでテープで止めるテープタイプと下着のように履かせるパンツタイプがあります。
|
・ベビーカーで入れる広さ
ベビーカーごと入れない狭い個室の場合、ベビーカーを外に置いておかなければいけません。赤ちゃんを降ろして、荷物を取り出してトイレに向かうのは大変ですし、置いたベビーカーが通路をふさいで他の利用者の通行も妨げてしまうかもしれません。十分なゆとりのある個室が必要です。
設計時に気を付けるべき5つのポイント
①ベビー設備の設置を分散させる
女性トイレへのベビー設備の設置は比較的当たり前になってきましたが、男性トイレへの設置はまだまだ少ないです。
ベビー設備が女性トイレにしかないので、利用が女性トイレに集中してしまう、パパとお子さまだけでのお出かけの際におむつ替えが出来ない、などのトラブルが無いよう男性トイレにも設置しましょう。
参考:建築設計標準 2.7 便所・洗面所 (4)乳幼児用設備を有する便房 ① 設置数、配置
ベビーキープは、広めの乳幼児連れ向けの個室だけでなく、一般個室内にも設置するのがおすすめです。どの個室にもベビーキープがあれば、保護者のトイレのみでおむつ交換台が不要な場合には、乳幼児連れ向けの個室ではなく一般個室を使用できるので混雑緩和が出来ます。
②カギや非常ボタンなどスイッチの位置に注意する
赤ちゃんと一緒にトイレに入った際に困ったこととしてよく上げられるのが、赤ちゃんがカギを開けてしまうという問題です。
赤ちゃんをベビーキープに座らせて丁度手の届く範囲にカギがあると、保護者が利用中に開けられてしまうことがあります。カギの届かない位置にベビーキープを設置するか、赤ちゃんの手が届かない高さにチャイルドロックを設置しましょう。
他にも赤ちゃんにSOSボタンを押されたという声もありました。赤ちゃんの手足が届く範囲に触ってはいけない物がないか確認が必要です。
ベビーキープの取り付け位置はお役立ち資料をご覧ください。
③保護者が目を離さない位置に設置する
設備からの落下など万が一のことを考えて、保護者が赤ちゃんから離れない、目を離さない位置に設置するようにします。
赤ちゃんは頭が重いので頭から落下することが多く、重大なケガにつながる可能性があります。消費者庁は転落に関する警告表示を利用者の目に付くところへ貼付するよう施設側に要請しています。
建築設計標準では
・乳幼児用椅子は、便座に座った状態から手が届く範囲、又は便器の前方の近接した位置に設けることが望ましい。
・乳幼児用おむつ交換台から目や手を離さずに利用できる位置に、荷物置き場やおむつ用のごみ箱等を設けることが望ましい。
とされています。
参考:建築設計標準 2.7 便所・洗面所 (4)乳幼児用設備を有する便房 ③ 部品、設備等
その他、保護者が赤ちゃんをおむつ交換台に寝かせたまま手を洗いに行かないよう、手洗い場の横にはベビーキープを設置する事をおすすめします。
④作業スペースの考慮
せっかくベビー設備が設置してあっても、作業がしにくいと印象はマイナスに。
おむつ交換台を開くと保護者が立つスペースがないといった失敗例も散見されます。横型のおむつ交換台にはクッションに左右の向きがある種類も。作業者の立ち位置が頭側に来ていないか、側面から作業する位置になっていないか確認します。
(左右に関しては施工時に入れ替え可能です)
着替え台では作業者がしゃがむスペースが必要です。おむつ交換中に体が便器にぶつかってしまう、ベビーカーが入ると開くスペースがない、といったことがないようにスペースに余裕をもって設置します。
⑤必要な設備がわかるようにする
赤ちゃん連れで外出する際は、おむつ交換台などが目的地にあるか事前に調べてから出かけるかたが多いです。しかし、いざ着いてみると広すぎてどこにあるかわからない・・・。
近くのトイレに入ったらベビー設備がなく、泣いている赤ちゃんを連れて探し回る羽目になることもあります。
フロアマップや案内看板にはベビー設備の詳細を表示することをおすすめします。トイレの入口にもピクトがあれば、中に入る前にベビー設備の確認ができるので便利です。
さらに、個室の扉などにピクトを掲示しておけば迷わず必要な設備のある個室に入ることが出来ます。
せっかくベビー設備が整っていてもそこにたどり着けなければ意味がありません。
分かりやすい表示が大切です。
まとめ
新しい施設やリニューアル後の施設は「充実したベビー設備があるだろう」とママやパパの期待値が高まっているので、訪れた際のちょっとした不便がマイナスイメージとして強く印象づいてしまうことも。ベビー設備をそろえるだけでなく、実際にトイレを使った際の動線や個室に入った時の
赤ちゃんの動きなどにも気を付けて設置すると、より快適なトイレ空間になるでしょう。
カタログ・データダウンロード
設置方法の詳細などはデータダウンロードから施工説明書をご確認ください。
使いやすい授乳室の参考レイアウトが載っている設計ガイドを配布しています。